元ひきこもりのゆるふわ社会生活blog

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山をなめるな!トレイルラン

初めてのフルマラソンを辛うじて完走した僕は達成感に満ち溢れていた。学生時代、マラソン大会に出ると必ずと言っていいほど脇腹を痛め、走ることに嫌悪感を覚えていた。マラソンなんか一生やりたくねぇ、そう感じていたはずだが、フルマラソン完走をきっかけにその考えがガラッと変わってしまった。その後も定期的に練習を続け半年後に2回目のフルマラソンに挑戦した。日頃の成果が身を結びなんと1回目のフルマラソンの記録よりも30分程タイムを縮めることができた。順風満帆である。やればできるやん俺!完全に調子に乗っていた僕は新たなチャレンジをすることにした。そう、トレイルランニングだ。

 

トレイルランニングとは、林道、登山道などの舗装されていない道を走るアウトドアスポーツである。アスファルトやコンクリートなどで舗装された道を走るロードレースのマラソン大会とは対照的だ。次は何に参加しようかとインターネットで探している時に出逢ってしまった。コースは長さ21キロで標高1400mの山を越えていくルートのようだ。山に登った記憶なんて小学校の頃の遠足が最後だろうか。当時はそんなに苦労した覚えはなかったはずだ。頼りにならない自分の記憶力をあてにして軽い気持ちで参加した。なぁに、普通に歩いても時速5キロくらいなんだから、21キロだったら歩いても4時間ちょっとで終わるじゃん。走ったら2〜3時間くらいで終わっちゃうんだから、お金と現地まで片道2時間かけて行って走るのはなんかもったいないな〜なんて思っていた。

 

大会当日。梅雨の時期も近づき不安定な天候が続いていたが一昨日までの雨が嘘のようだ。キラキラと太陽が輝く。ガッツリ肌でも焼いてスポーツマンにイメチェンしよ。『焼けてますね?何かスポーツでもされてるんですか?』『全然ですよ、ただ山を走ったりするのが好きなだけでそれで肌が焼けちゃったんです。』『えー、そうなんですか〜!てか山を走るんですか!すご〜い!』くだらない妄想を頭の中で膨らませる。スタートまでの時間をリラックスして過ごした。

 

スタート位置に並びピストルの音が鳴り響く。先頭の人から順になだらかな坂を登っていく。しばらく走っていると徐々に開けた砂利道から傾斜のある山道へと変わっていく。道幅が狭く人一人歩くのが精一杯でアリの行列のように連なる。スタートから1時間程して道幅も広くなり人もばらけてきたので自分のペースで進めるようになった。よっしゃ、ここからペースを上げてくぜ。俄然気合が入る。

 

スタスタスタッ、スタスタスタッと軽かった足取りが急激に重くなる。傾斜が一気に険しくなった。ドスンッ、ドスンッ。一歩足を上げ自分の体を引き上げまた一歩。心臓の鼓動が激しくなり息も上がる。これいつまで続ければいんですか?トレイルランに参加した自分を後悔した。「分け入っても分け入っても青い山」中学校時代に習った種田山頭火の俳句が頭をよぎる。どこまで行っても終わりが見えないんですが…

 

心は死んでいたもののなんとか頂上まで辿り着き次は下りだ。下りなら重力に任せて進むだけだと思った自分が馬鹿だった。冬場はスキー場に利用されているそのコースは、傾斜が急すぎで走って下ることは初心者には難しいのだ。ブレーキをかけながら一歩一歩着実に自分の足にダメージを蓄積させた。ようやく下り終わったと安堵していたのも束の間、目の前に見える登り坂に僕は絶望した。もう無理だ。その場で体育座りをし、次々と僕を追い抜いていくランナーの背中を見守った。空中にブーンと音を鳴らすドローンがふわふわと漂う。俺をゴールまで運んでくれないかなと現実逃避を始める。「咳をしても一人」このまま俺は死んでいくんだ。山は怖い、山は怖い…

 

しばらく体も動かず座っていると後ろからきた山男に声を掛けられた。大したことを言われた訳ではないが、沈んでいた気持ちも復活し元気が湧いてきた。喉がカラカラで走る前に水分補給をしないとまずいと思い、山肌から流れ出る水を飲み喉を潤した。お腹を壊しても構わん、失うものは何もないと開き直り再度走り始めた。その後心折れることなく最後まで走り抜けた。結果、21キロの道のりを5時間以上かけて完走した。

 

トレイルランというカジュアルな名前に騙された。

山をなめるな。山をなめるな。

 

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